第16回
外国人用の1日乗車券はありますか
フロントで香港からの若夫婦に「外国人用の1日乗車券はありますか」と聞かれました。
「外国人用はありませんが、営団地下鉄は710円、これに都営地下鉄とバスが加わると1000円、更にJRの電車も入れると1580円で1日乗り放題ですと答えました。
「ところで今日はどこに行くのですか」ときくと「新宿と原宿です」と答えるので、
「4回以上乗り換えしないなら、1日乗車券は買わない方が得ですよ」とつい言ってしまいます。
この時、いつも家内とのニュージランドのクライストチャーチでの出来事を思い出します。
バスの1日乗車券5ニュージランドドル(NZドル)(約400円)を4,5NZドルに割引く券をホテルでもらってバス案内所に買い行きました。
窓口の女の人が「どこに行くのか」と聞くので、「南極センターと動物公園」と答えると、「それだったら7番線からのバスに乗りなさい。すうすれば2,7NZドル(約210円)で、4時間以内ならその切符で帰ってこられるから1日乗車券は買わない方がいい」と言われてその通りにできました。
売り上げを上げることを考えれば、ただ売るだけでいいのに、ことばもよく分からない外国人の私達に、少しでも得な方法を教えてくれたことが、いつまでも忘れられません。
私共のお客さまは、個人旅行の観光客がほとんどですから、都内見物にはタクーシを使わずバスか地下鉄か電車です。
物価高の東京では、この交通費が大きな負担になりますし、特にアジアの人達にとっては、それが自国の何倍にもなると聞きます。
私は、海外で町歩きをする時には、1日乗車券を買って、特にバスに乗るのが楽しみです。
バスの窓は軒下の高さで町が見られ、バスの中には、その町の匂いやことばがあふれています。
東京と違って停留所の名前も、降車停留所のアナウンスもありません。目立つ建物を目指して、乗ったり降りたり、または隣りの席の人に行き先のパンフレットを指差して教えてもらいます。
タイでは、行き先を間違えてバスに乗ったために、乗り換えのために停留所でないところで降ろしてもらったり、シンガポールでは、ナイトサファリーに行くのに分からなくなったら、隣りの叔母さんが運転手さんに何回も聞いて乗り換えのバスを教えてくれました。一寸でも親切にされたことは、いつまでも忘れられません。
東京でも、外国人用の格安な一日乗車券ができたら、都内見物は「これでどうぞ」と胸をはってすすめることができます。
そうすれば、バスに各国の観光客が乗り込み、隣りの人との交流風景が見られるようになるのではないでしょうか。
日本観光旅館連盟 日観連月報より