第25回

ワールドカップあれこれ



 ワールドカップが始まって、すぐに玄関の合鍵を作り足すことになりました。 私どもの門限は午後11時。それより遅く帰ってくる人には玄関の鍵を貸しています。 試合を見に行く人から「遅くなるから鍵を」といわれて12室の私どもで8個用意していたのですが足りず3個作り足しま した。
スタジアムは千葉、埼玉、横浜はもとよ り、新潟、静岡まで出かけて行きます。 私どもが寝たあと夜中に帰ってきたり、朝帰りする人もいます。 アイルランドの人が、朝帰ってきて、フ ロントの時計を見ながら「これは朝の7時かそれとも夜の7時か」などと聞かれたこともありました。 「スポーツ・カフェはどこにありますか」 もよく聞かれましたので、六本木を教えてあげました。
始まる前にフーリガン対策の講習会を受けたり、始まってからは毎日のように警察の人が見えていましたが、1次リーグの終わった6月15日頃からは、ばったりいらっしゃらなくなりました。

 私どもでは毎日、約7ヵ国の人が泊まっ ていましたが、お客さまどうしのけんかも酔っ払ってあばれたり、物を壊されるようなことは一切なくほっとしました。 ただ困ったのは、毎朝出かけるのが遅く、 日によっては午後になりますので、部屋の掃除をするのに苦労しました。
6月に泊った人の国籍を調べると、一番多かったのはイングランド、それからアメ リカ、アイルランドと合計24ヵ国の人が泊っていました。そのうちサッカー参加国は10ヵ国です。
テレビ局の人が、「セネガルのサポータ ーが泊りにきたら密着取材をしたいので教えてほしい」と言われましたが、いらっ しゃいませんでした。
 
 ところで、この期間、東京で1番マスコ ミに取り上げられたのは、山谷の簡易宿泊所の「ホテル寿陽」さんだったと思います。ネット予約だと1泊2700円で、80室 のうち50室がサポータで占められていると、その様子が何回も取り上げられていました。 物価が高いといわれる東京で、外国の人が安く泊まれる宿があることが、世界に発信 されたことは、とても良かったと思います。
また、東京都ではワールドカップで訪日する人のためにウエルカム・カードを60万部発行しました。これは都内の地図、交通路線図、緊急連絡先案内などが入っていて英、仏、韓など7言語で作成されています。台東区でも上野、浅草の詳細な案内と各施設の割引などの特典が入った台東カードを4万部作成し、それぞれ宿泊施設に配布されました。 これをチェック・インしたお客さまに差し上げると、皆さん一様に喜んでくれます。 充分な量を貰いましたのでワールドカップ 閉幕後も重宝しています。

 私どもでは1次リーグの終わる6月15日頃までは、サポーターの人が多かったの ですが、決勝リーグが始まると、負けた国の人なのか急にキャンセルが増えて苦戦しました。 それでも一般客の予約が入り、最終的には 6月中の部屋稼動率は95%、外国人客 は延べ545名でした。これは前月の528名より少し増えましたからワールドカップ効果ありといったところでしょうか。
それよりも、俄かサッカーファンになって日本と韓国の活躍や、決勝戦に胸躍らせてテレビの前に釘付けになって楽しめたのは、私にとっては久しぶりのことでした。



日本観光旅館連盟 日観連月報 2000年より