第22回

今年のお花見は大成功!


 道でご近所の画家桐谷さんに会いました。「今年のお花見はいつにしましょうか。」「開花予想では、例年より早いといってますから3月30日の土曜日はどうでしょうか。今年は桜の花の下でやりたいですね。」
 ここ4年問は毎年雨に降られています。飲み物も、焼き鳥も用意しますから、雨の時は澤の屋の食堂でのパーティになります。
 泊りの外国の人が帰って来ると次々に参加しますから、結構楽しい国際交流です。
 桐谷さんが「さあ春です!お花見に行きましょう」とイラスト入りのチラシを早速作ってくれました。
 参加費は2000円、持ち込みも大歓迎と書かれています。私どものお客様はストリートパーティでも、忘年会でも、いつも無料招待させてもらっています。

 この辺りの花見の場所は谷中の墓地です。ここには東京では珍しい派出所があって、そこに住む名物おまわりさんの桜さんが取り仕切っていますし、ご近所の人が主ですから、毎年和やかな花見になります。
 前の晩にご近所の島村さんが、地面にビニールの敷物を敷き詰めて段ボール箱に名前を書いて場所をとってくれました。
 当日は穏やかな花見日和になりました。桐谷さんの奥さんのエリザベスさんが十年ほど前に英文で作ってくれた大きなお花見ポスターに、日付だけをはりかえてフロントの横に貼り出します。
 「今日、ご近所の人とお花見をします。お酒も食べ物もたくさんあります。私どものお客さまは無料招待です。とても楽しいですから、どうですか」と出掛けるお客さま全員に声をかけます。
 当日参加したのは、総勢7人。アメリカの弁護士さん、ドイツのお得意さんのジャーナリスト、フランスのお母さんと息子さん、イギリスの学生さん、アメリカに住む日本人のお父さんと娘さん。墓地までの道すがら、古い井戸やお地蔵さんのある谷中の裏道を案内して行きました。
 40人ほどに人が出たり入ったり、通りがかりの知り合いの人が入り込んだり、賑やかな花見になりました。外国のお客さまも窮屈そうに地面に座ったまま、その中に溶け込んでいます。
 そのうちにアメリカの「ブルーグラス」の愛好家の人達の音楽が始まって最高潮です。
 桜に花の下での何年ぶりかのお花見は、5時から始まって9時を過ぎてやっとお開きになりました。

 何日かして「私白身生まれて初めての花見参加でしたし、娘にとっても素晴らしい思い出になったようです」という文章と一緒に花見の写真がメールで送られてきました。
 また道で桐谷さんに会いました。「今年の花見は」とたずねると、「大成功、ワッハハハ」という答えが返ってきました。

日本観光旅館連盟 日観連月報より